コポポポポ。
カチャ、カチャ。
(う…ん…)
すうっと、カーテンの隙間から射し込む光と、ふわりと漂う優しい香りに目を覚ます。
「昴…さん…?」
隣に眠っていたはずの姿が見当たらず、わたしは身体を起こした。
「紡。起きたのか」
声のした方を振り向くと、既に身支度を整えた昴さんの姿が寝室の入り口にある。
「あ…もう、お仕事の時間?」
枕元の時計を見ると、間もなく午前5時を指すところだ。
「ああ」
少しだけ目を細めて、ベッドの端に腰を下ろすと、わたしの顔を覗き込んでくる。
「…や、やだ…そんなに見ないで」
寝起きの顔を至近距離で見つめられて、わたしは思わず顔を伏せた。
「…バカだな。お前の寝惚けた顔なんか見慣れてるって」
ちょっとだけ意地悪に。
でも、わたしの髪を撫でてくれる大きな手は優しくて。
重なった視線は穏やかで。
吸い寄せられるように、ふたりの距離がどちらからともなく縮まっていく。
「…可愛いよ」
「…ん…昴、さ…」
唇に広がるやわらかな温もりに、思わずため息のような言葉が漏れる。
「おはよう、紡」
吐息が肌をくすぐる距離で、低い囁きが落とされる。
「昨夜の紡も…眠っている紡も…可愛かった」
甘い言葉と共に、再び唇が降りてくる。
さっきよりも深く、呼吸まで絡み取っていくような口付け。
彼の言葉に、昨夜のことを思い出して、身体の奥から熱が込み上がって来るのを感じた。