さらさらと流れる心地よい初夏の風。
やわらかな日差しが、すうっと室内に光の帯を作り。
ソファに身を預け、ゆるくまぶたを閉じるその人の顔に陰影をつけている。
それを見ていた一磨は、フッと優しく微笑みを浮かべ、視線を窓の外へと移した。
その表情はとても穏やかで、室内に流れる空気と、かすかに聞こえる時計の秒針の音が、普段の忙しさを忘れさせる。
いつものように、コポポポポとカップに注がれるミルクティー。
「……そろそろ、アイスに変えるかな……」
つぶやかれた言葉は、そよ風に消えていった。
「……ん……」
ふわりと何かが肩に触れた気がして、わたしはゆるやかに意識を取り戻した。
うっすらと目を開けると、すぐ近くに一磨の顔が見える。
「……おはよう?」
ふわっとやわらかい笑顔を向けられて、ドキンと胸が音を立てる。
「あ……わたし、眠っちゃった……?」
辺りを見回しながら、わたしはソファから上半身を起こそうとする。
すると彼は、黙ってわたしの肩に両手を添え、そっとソファへと戻すように促した。
「……もう少しこうしてて」
床に落ちたブランケットを拾いながら、優しい瞳がわたしを覗き込む。
「昨日も、遅かったんだろう?今日は、ゆっくり過ごそう」
「え……でも……」
「結婚式の準備は、また今度。久しぶりに、詩季とゆっくりしたいんだけど……どう?」
戸惑うわたしに彼は少し頬を染めて、甘えるようにそう尋ねる。
「……うん……」
思わず笑みをこぼしながら、わたしが返事をすると。
「詩季……」
ゆっくりと、風が頬を撫でるように。
近づいて来た彼の気配に目を閉じる。
ふわりと触れる温もりと、やわらかな感触。
胸の中いっぱいに差し込む陽の光。
大好きな彼のにおいに包まれて、久しぶりの休日に、わたしたちは優しい時間を過ごすのだった。