ザワザワと家の外が騒がしい朝。

わたしはテレビを消してハァッとため息をつく。

「それにしてもお姉ちゃんってば、大胆だよね」

ハッと顔を上げると、まーくんがニヤニヤと笑みを浮かべながらわたしの顔を覗き込んでいた。

「デートの後にこんなお土産持って来るんだからさ」

そう言ってカーテンが閉め切ってある窓を指差す。

「うっ……ほんと、ごめんね、まーくん。学校、行けそう?」

「まあ、何とかなるから大丈夫。それより僕……お姉ちゃんがこんなにたくさんの報道の人たちに囲まれるくらい有名になって嬉しいよ」

まーくんの笑顔にホッとしながら、わたしはこうなった理由。

昨日の隼人とのデートを思い出した。


久しぶりに重なったオフに、わたしが隼人に連れて来られたのは、とある競技場。

目の前に繰り広げられる白熱した戦い。

一面を青に染め上げた、サポーターたちのものすごい熱気の渦。

「やっぱいいな、サッカーは!」

目を輝かせながら、隣の彼が歓声にかき消されないように声を張り上げる。

その姿は、サッカーをしている時のように生き生きとしていて、まるで少年のようだ。

そんな彼の様子にこっそり笑みをこぼした時。

「ねえ、あれって白鳥隼人じゃない?」

後ろの方からそんな女の子の声がわたしの耳に届いた。

ドキリとしてうつむくと、ポンと頭に大きな手が乗せられる。

「そんな顔すんなよ。俺はお前となら何言われてもいいぜ?」

隣を見上げると、グラウンドに視線を向けたままの隼人の、フッと優しい微笑みがあって。

「……うん……」

わたしの声はサポーターたちの大歓声に飲み込まれていくのだった。



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