「今日はずっと一緒にいて……」

2月19日。

つい先ほど終わったばかりのWaveのコンサート会場の裏。

まだ冷めきらない熱を持ったその瞳と頬に触れる手に、わたしは静かに頷いた。


打ち上げを兼ねた義人くんの誕生日パーティーを早めに抜け出して。

わたしたちが彼の部屋へと帰り着いたのは、もう日付が変わろうという深夜。

「……義人くん。お誕生日、おめでとう」

時計の針が0時を過ぎてしまう前に、わたしは改めて、ソファの隣に座る彼に向かってそう言った。

「……ありがとう」

フッと微笑みを浮かべた彼の手が、再びわたしへと伸ばされて。

グイッとその腕の中に閉じ込められる。

今日は何だか少しだけ、彼の体温が熱い気がする。

トクトクと心地よい鼓動を聞きながら、その胸元に下がるペンダントを見つめた。

シンプルなリング状のトップがついたそれは、わたしから彼への誕生日プレゼント。

『Votre côté』

フランス語で彫られたメッセージには、わたしの想いが込められている。

「詩季ちゃん……」

耳元で吐き出される熱が、わたしの全身を巡るように痺れさせていって。

その甘い痺れに、わたしの身体は彼の腕の中で力を失ってしまう。

「…………」

無言のままわたしを抱き上げて、彼は静かにリビングを後にした。

その腕も、瞳も、やっぱり今日はいつもよりも熱くて。

わたしは彼の首に抱きついて、ギュッと目を閉じた。


「詩季ちゃん……詩季……」

「……義人くん……」

ゆっくりと広がっていく熱と、むせかえりそうなほどに甘い空気。

真っ暗な闇の中でお互いを探すように、ふたりの手と吐息が絡まり合う。

カチッと、日付が変わったことを知らせる、小さな時計の音が聞こえて。

「あっ……」

その瞬間。

わたしは彼の熱に溺れていくのだった。


――End.



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