”弱さに怯えて生きてきた 君と出会ってからは全てが変わった

会いたいよその笑顔に 愛しくて切なくて苦しいよ

僕が夢見てる二人の世界では 君は笑っているね

君のこと迎えに行く 今すぐにこの街を抜け出して

恐れずについておいで 果てしない星めぐり 君と”


CDジャケットの中に挟まれていた一枚の紙。

カサリと開いたその紙に。

ポタッと一滴、染みが広がる。

「翔……くん……」

愛しいその歌声をかき消してしまわないように。

震える唇から、小さく漏れた彼の名前。

それと同時に、わたしの瞳からすうっと、熱いものが頬を伝う。

彼の想いを抱きしめるように。

手にあるその紙片を、わたしはギュッと抱きしめた。


1ヶ月前のことだった。

仕事でテレビ局を訪れたわたしは、メイクルームにやって来ていた。

「そういえば翔くん、CDを出すんですって?」

鏡越しにそう尋ねて来たのは、モモちゃん。

彼の明るい笑顔に少し気恥ずかしさを感じながら、わたしは小さく頷く。

あのWaveのコンサートで翔くんが歌った『君と星めぐり』。

それがシングルCDとして発売されることが決まったのだ。

「……良かったわね、詩季ちゃん」

「……うん……」

翔くんと想いが通じ合って。

そして今、わたしがこうしていられるのも。

翔くんへの想いを胸の中に大切に持っていられるのも。

支えてくれるたくさんの人がいるから。

わたしの幸せは、みんなのおかげなのだと、改めて実感する。

「……はい、これでおしまい」

スッと頬にチークが乗せられて、わたしはゆっくりと閉じていた目を開ける。

鏡の中で優しく微笑むモモちゃんの姿に、自然と口から言葉が漏れた。

「モモちゃん……ありがとう……」

「お礼なんていいのよ。詩季ちゃんが幸せでいてくれるのが、一番なんだから。きっと……徹平ちゃんもそう思ってるわ」

「……うん」

「さ、今日も詩季ちゃんの幸せいっぱいの笑顔を振り撒いてらっしゃい」

そう言って彼はポンとわたしの肩を叩いて。

その笑顔に見送られて、わたしは部屋を後にしたのだった。



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