「お姉ちゃん!わぁ、キレイ!」
「あけましておめでとうございます、未来ちゃん」
1月1日、元日。
わたしは春に誘われて、近くの神社へとやって来た。
振袖姿のわたしを見るなり、駆け寄って来た女の子。
「未来ちゃんもお着物、とっても可愛いよ」
「えへへ。お姉ちゃんと一緒で嬉しいな♪」
春の妹の未来ちゃんは、お兄ちゃんたちと一緒に先に来ていたらしく、手には破魔矢を持っている。
「お兄ちゃん。今日はお姉ちゃんもお家で一緒に過ごせるんでしょ?」
「ああ」
「良かったぁ!じゃあ未来たち、先に帰って待ってるね!」
嬉しそうに満面の笑顔を浮かべて走って行く未来ちゃん。
その背中に向かって、春は言った。
「あ、おい……転ぶぞ」
「ねえ、春。春は何をお願いするの?」
お詣りを終えて絵馬を買ったわたしたちは、ペンを手に境内の裏にあったベンチに腰を下ろした。
「……気になるか?」
フッと微笑みを浮かべて、彼はいたずらっぽく尋ね返す。
「そ、そりゃあ……」
スッと伸ばされた手が、わたしの頬に触れる。
そして彼は覗き込むようにして顔を近づけると、わたしの耳元でささやいた。
「詩季が教えてくれたら、教えてあげる」
「は、春っ」
カアッと熱くなる頬。
カラン。
思わず彼の胸を押し返そうとして、手にしていた絵馬を落としてしまう。
「あ……」
彼の足元に転がり落ちた絵馬。
それを拾い上げた彼は、穏やかな微笑みを浮かべる。
「ありがとう……」
そう言葉を紡ぐ唇が目の前に迫り。
「春……」
そのまま重なり合う温もり。
「“詩季を愛している”」
合間にささやかれる言葉。
春が手にした絵馬には、今彼が口にした言葉が綴られている。
(それって……お願いじゃないんじゃ……)
そう考えるわたしの気持ちを察したのか、彼は少し顔を離して、じっとわたしの顔を見つめた。
吸い込まれそうな、強い光の宿る瞳。
「キミを愛している……キミと神様への、誓いだ」
「……春……」
賑わう境内のその裏側。
誓いの口づけがわたしの額に、頬に、唇に落とされる。
(春……わたしも……“春とずっと一緒にいられますように”)
――End.