『……Waveで“snow flakes”でした……』

闇に包まれた静かな海岸線をゆるやかに走っていく車。

それが目的の場所へ着いた頃には、東の空がうっすらと白み始めていた。

「……寒くない?」

「うん。大丈夫」

わたしの手を引いてくれる大きな手の温もり。

キュッと優しく包み込むように握られて、わたしも同じようにその手を握り返した。

「冬に来るのは初めてだね」

「うん……」

会場を後にしたわたしたちは、一磨さんの運転で海へとやって来た。

『初日の出を一緒に見よう』

そう彼に誘われて。

ザザ…ンと打ち寄せる波は、今日も穏やかで。

わたしたちはしばらく砂浜を歩いた後、防波堤に腰を下ろした。

「……詩季」

「うん?」

ふいに名前を呼ばれて隣の彼を見上げると。

ふわり、温かな腕に身体を包まれる。

目の前に迫った顔。

吐息が触れそうな距離に彼の穏やかな微笑みが浮かんだ。

「見てごらん。夜が明けるよ」

「……あ……」

彼の視線を追ったその先には。

水平線の向こうから射し込む、輝く朝陽。

キラキラと光る水面がまぶしくて。

放射線状に空を駆けめぐる光があまりにもキレイで。

言葉を失ってしまう。

「あけましておめでとう……詩季」

ふわりと耳元でささやかれる優しい声音に振り向いた瞬間。

わたしの唇に温もりが広がった。

(一磨……)

光の中で重なるふたつのシルエット。

今年も、来年も、その先も。

ずっとあなたとここで、この太陽の輝きを見ていたい。

あなたの温もりに包まれながら。

「あけましておめでとう……」

――End.



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