――第5部・ゆく年編

「第90回紅白歌合戦は赤組の優勝で幕を閉じます。皆さまよいお年をお迎えください」

アナウンサーの言葉を最後に、会場中に花火が打ち上げられた。

放送が終わったのは、23時30分。

ステージに幕が下りたのはそれから5分ほど経ってからだった。

「詩季ちゃん、司会お疲れさま」

人でごった返す舞台袖で、わたしはWaveの翔くんから花束を渡される。

「ありがとう」

「それと、優勝おめでとう」

フッと微笑みを浮かべながら付け加えたのは一磨さん。

「やっぱり詩季ちゃんが司会を務めたのが大きかったんじゃない?」

そう言っていつの間にか隣に立っていた京介くんがわたしの肩を抱いた。

「あ、あの……」

「そんなん言うたら、俺らのせいか〜?」

言葉に詰まったわたしの背後から笑いを含んだ関西弁が飛び込んで来る。

振り向くと宇治抹茶のふたりが笑顔で近づいて来るところだった。

彼らも手に大きな花束を抱えている。

「詩季ちゃん、ホンマお疲れさん」

「あと、おめでとうさん」

「松田さん、慎之介さん……ありがとうございます。おふたりも、お疲れさまでした」

頭を下げるわたしの肩を、慎之介さんはポンと軽く叩いた。

「ホンマはもうちょっとお喋りしたいとこやねんけど……俺ら元日公演があんねん」

名残惜しげにそう言った慎之介さん。

ふたりはこれから公演に参加するため、すぐに大阪へと向かうのだそうだ。

「頑張ってくださいね」

「ありがとな。詩季ちゃんに応援されたら俄然やる気出るわ」

「ほな、よいお年を」

ふたりはそう言い残して足早に会場を後にした。


着替えを終えたわたしは控え室でほっと息をつく。

時計の針は23時45分を指していた。

1年の締めくくりに、こんな大役に指名してもらえたこと。

感謝と共に、過ぎていった日々を思い返す。

(彼からも……ステキな思い出をもらって……)

わたしの胸の中に浮かぶ笑顔。

自然と頬がゆるんだ時。

コン、コン。

ノックの音が響き、わたしは慌てて立ち上がった。

「はい」

カチャリと開いた扉。

その向こう側に居たのは……

<選択してください>

A:藤崎義人

B:本多一磨

C:神堂春

D:????



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