――第2部・Wave編
宇治抹茶のふたりが白組司会を。
そしてわたしが赤組司会を務めながら順調に番組は進行していき。
そして白組の次の登場がWaveというところにさしかかった。
「詩季ちゃん」
わたしが舞台袖で休憩していると、ふいにポンと背中を叩かれる。
「あ……一磨さん」
振り返ると優しい微笑みを浮かべた一磨さんが立っていた。
「着物姿、すごくキレイだね」
「あ……ありがとうございます。一磨さんも次、頑張ってくださいね。楽しみにしてます」
わたしの言葉に彼はクスッと笑って、わたしの顔を覗き込みながらいたずらっぽくこう言った。
「敵を応援しちゃっていいの?」
「……あ」
一瞬、固まったわたしは一磨さんと顔を見合わせてクスクスと笑った。
「でも……詩季ちゃんに応援してもらったから、いいステージにしてくるよ」
彼は、またねと言ってわたしの頭をポンポンと叩くと去っていった。
「あーあ。一磨のやつ、後で釘刺しとかなきゃな」
ふうっと息をついたわたしの背後から、そんな声が聞こえ、ギクリとして振り向くと、意味深に微笑む京介くんの姿がある。
「きょ、京介くん……」
「やっぱ一磨も……詩季ちゃん狙いか……」
そう言いながら、間を詰めてくる京介くんに、思わず後ずさると、近くに置いてあった機材に行く手を阻まれた。
「ずいぶんモテるね、詩季ちゃんは」
ズイッと京介くんの顔が近づき、息がかかるほどの距離になる。
「あ、あの……」
「なに?……その顔、無意識?」
「京介……く……」
「おい」
その時、京介くんの背後から低い声が響き、京介くんの身体が離れていった。
「何だよ。義人か」
「一磨が呼んでるぞ」
冷ややかな視線を向ける義人くんに、ため息をつきながら京介くんは歩いて行ってしまった。
「……詩季ちゃん」
京介くんの背中を呆然と見送っていたわたしに、義人くんが声をかける。
視線を向けると、フッと穏やかな微笑みを浮かべて、義人くんは言った。
「頑張って」