“Silent night, holy night.

All is calm, all is bright.

Round yon Virgin, Mother and Child.

Holy infant so tender and mild.

Sleep in heavenly peace.

Sleep in heavenly peace.”

暗闇を震わせる、素の声。

機械を通さない、ありのままを伝えるその声は。

澄んだ空気の中、ふわりと心が包まれるような。

誰かの温もりを思い出させる、そんな声をしている。

その温もりを感じながら、ゆっくりと立ち上がる、ひとつの影。


“Silent night, holy night.

Shepherds quake at the sight.

Glories stream from heaven afar.

Heavenly hosts sing Alleluia.

Christ the Savior is born.

Christ the Savior is born.”

(あ……)

ふいに重なったふたつの声に、わたしは一瞬、言葉をなくした。

暗くて姿は見えないけれど、気配で分かる。

低く、よく通る、穏やかな声。

それはわたしの心にすっと入り込んで、抱きしめてくれるようだ。

(一磨さん……)

声が恋しいって、こういうことを言うのかな。

恋しくて、愛しくて、抱きしめたい。

この空気が、ゆらめく灯火が、この夜が、胸の中を満たしていく。

わたしはその声に誘われるように、大きく息を吸い込んで。

そしてわたしを導く彼の声に、そっと自分の声を乗せた。


“Silent night, holy night.

Son of God love's pure light.

Radiant beams from Thy holy face.

With dawn of redeeming grace.

Jesus Lord, at Thy birth.

Jesus Lord, at Thy birth. ”

重なる声。

重なる空気。

重なる時間。

重なる鼓動。

重なる想い。

混ざりあって、溶けていく。

まるで心が裸になったみたいに。

そしてわたしは、その声に溺れていく。



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