「……ゲストの件、引き受けてくれてありがとう」
「い、いえ。そんな……何だか皆さんの大切なライブにわたしがお邪魔してしまって良いのか……そっちの方が心配なんですけど」
わたしがそう言うと、彼はクスッと小さく笑い、ポンと大きな手でわたしの頭を優しく撫でた。
「君なら……大丈夫。それに君がいると夏輝が喜ぶから」
「ちょっ!春、何言って……」
神堂さんの言った言葉に、わたしの隣で夏輝さんが頬を真っ赤にした。
そしてそんな夏輝さんには構わず、神堂さんはわたしの顔を覗き込むように顔を近づける。
「……俺も、君がいてくれると嬉しい。それも……この特別な夜に」
(う、うわ……)
目の前に映し出されるその色っぽい瞳に、わたしの心臓は途端にバクバクと暴れ始める。
すると、突然横から伸びてきた手に腕をグイッと引かれた。
「おい、春。詩季ちゃんに近づき過ぎだって」
夏輝さんはわたしを神堂さんから引き離すように、わたしの腕を掴んでいた。
「あ……あの……」
掴まれた腕と、少しだけ離れた切れ長の瞳。
どう反応すれば良いのか迷っていると、奥のソファからため息とともに声がかけられる。
「まったく。夏輝も春も……詩季ちゃんには相手がいるんだろう。困らせるな」
それは、わたしたちのやり取りを黙って見ていた秋羅さんだった。
「ごめんね、詩季ちゃん」
フッと穏やかに微笑む秋羅さんに、わたしも微笑みを返す。
「あ……いいえ。ありがとうございます」
「詩季ちゃん、ごめん……でも、そんなに構えなくて大丈夫だから。客には事前にシークレットゲストが来ることは告知しているし……今日は招待客しかいないから、俺たちの友達と会うような感覚で気負わないでくれたらいいよ」
秋羅さんの言葉に視線を落として肩をすくめた夏輝さんは、そう言ってわたしを安心させるように背中をポンと叩いてくれる。
「それと……君にもクリスマスプレゼントを用意してあるから……楽しみにしていて」
「え?」
(クリスマスプレゼント?)
最後にそっとつぶやかれた神堂さんの言葉。
何か含みを持たせたようなその表情と言葉の意味が気になりながら、わたしは準備に向かうのだった。