それから1ヶ月。
発売日を迎えた翔くんのソロデビュー曲、『君と星めぐり』。
わたしの元にも、彼が送ってくれたCDのケースがある。
「……詩季。そのジャケットを開けてみろ」
事務所の応接室。
山田さんに促されて、わたしは封を開け、ケースからジャケットを取り出す。
表紙は、翔くんがピアノを弾く姿。
あのコンサートの日を思い出させるその写真に、トクリと胸が音を立てる。
そして開いたジャケットの中にあったのは。
「……手紙……?」
ふたつに折られた、白い紙が納められていた。
少しずつ速まっていく鼓動。
思わず胸を押さえながら、わたしは導かれるようにその手紙を開いた。
TRRRR……
わたしがジャケットの中に隠された手紙を読み終えた頃。
まるで待っていたとでも言うように、事務所の電話が鳴り響き。
やがて電子音を合図にFAXが流れてくる。
「ああ、来たか」
ニコニコと満面の笑顔でFAXを確認した社長が、山田さんにそれを差し出す。
そのまま山田さんは受け取ったFAXをテーブルに置いた。
「……来週、桐谷翔と合同記者会見をする」
「……え?」
驚いて顔を上げると、少し呆れたような優しげな山田さんの瞳があった。
「なんて顔をしている……ほら。顔を拭いてそれを読め」
「は、はい……」
差し出された山田さんのハンカチは、きれいにアイロンがかけられていて。
思わずクスッと泣き笑いになってしまう。
不器用で分かりにくい優しさが嬉しくて。