教会の扉の前に立って歌を口ずさむ。
やがて開かれた扉の向こうに見えるのは、彼のシルエット。
ベール越しにわたしたちは見つめ合って。
そしてわたしは彼の待つところへと、バージンロードを歩き出す。
「……詩季」
わたしの手を取り、祭壇の前に進み出ると。
わたしにしか聞こえないくらいの小さな声で、彼はそっと名前を囁いた。
そしてゆっくりとベールが上げられる。
ステンドグラスから降り注ぐ、七色の光の帯が絡まり合って。
すうっと長い影がふたつ、赤い絨毯にまっすぐに伸びている。
その影がそっと、ひとつに繋がっていく。
「……愛してる」
言葉と共に、唇に広がる温もり。
一瞬、ドキッとして肩が震えそうになった。
カメラのアングルでキスしたように見せるだけで、実際はこんな設定はなかったのだ。
けれど、触れ合った唇の感触。
優しくわたしの腰を引き寄せる腕。
そしてわたしだけに届けられる甘い囁きに、全てが溶かされていく。
「結婚しよう……詩季のこの姿、今度は俺だけに見せて……」
――End.