とっさに手にしていたタオルを抱きしめて、わたしは一磨さんに背を向ける。
「…………」
ドクン、ドクンと心臓の音がやけにうるさい。
濡れたブラウスは肌に貼りついて、下着のラインを浮き出している。
カチャリ。
不意に後ろで、扉の鍵が閉まる音が聞こえた。
それがやけに耳に大きく響き。
「詩季ちゃん…いや…詩季…」
ふわり。
包み込むように背中から伸びてきた腕がわたしを抱き寄せる。
その彼のシャツも、雨に濡れてうっすらと透けていて。
ドクンとまた胸が揺れる。
「…っくしゅん」
「…詩季。寒い?」
突然、込み上げてきたくしゃみを抑えきれずに。
一磨さんはそう問いかけてキュッと抱きしめる腕に力を込めた。
「少しだけ…でも、大丈夫。あったかい…」
背中から伝わってくる鼓動。
触れ合ったところから、体温が混ざり合う。
「…詩季。こっちを向いて」
耳元で囁かれて、わたしの体がかすかに震えた。
「…ずるい」
そんな弱点をつくなんて。
後ろから抱きしめられたまま、ゆっくりと彼の方へ顔を向けると。
「っ…ん…」
待ちきれないと言うような口づけが降って来る。
ギュッと絡みつく腕。
触れるだけのキスは深くなり、侵入してきた熱いものに翻弄されていく。
「かず…んんっ」
待って、と言う隙も与えてくれない。
心に反して体がどんどん熱くなる。
いつも優しい彼が、強引で激しくて。
酸素の回らなくなった体から力が抜けていく。
高ぶった感情が、理性を失って。
もっと、もっと、と胸がうずく。
もっと、触れたい。
「…詩季…」