「…ごめんね…心配、かけたよね…」
疲れ切ってソファで眠る恋人の長い艶やかな髪を撫でながら、そう謝罪の言葉を口にする。
感情に任せて、こんな風に彼女を抱いたのは初めてだった。
情けない気持ちで、申し訳ない気持ちで、胸を締めつけられる。
きっと彼女を傷つけただろう。
「こんな俺…嫌いになっても仕方ないよな…」
そう吐き出した時。
「…嫌いになったりなんて…しない」
「…え…?」
ゆっくりとまぶたが開かれて、真っ直ぐな目が俺に向くと。
彼女はふわりと優しく微笑んだ。
「びっくりしたけど…夏輝さんが気持ちをぶつけてくれたことが…嬉しかった」
「詩季ちゃん…」
「夏輝さんが感じていること、もっとわたしに教えてほしい。もっと夏輝さんを知りたい…」
「…嫌にならない…?」
「ふふっ。嫌になんて、なるわけない…」
伸びて来た白い腕が、俺の頭を抱き寄せて。
ふたりの距離を埋めるように、近づいてきた彼女から、優しいキス。
唇から伝わる温もりが、そっと心を包んでくれる。
「…大好きだよ…」
「わたしも…」
こうして君が受け止めてくれたから。
醜い感情も、君になら。
見せられるかもしれない。
「ありがとう…」
いつか、君に贈りたい。
あの曲の歌詞にあるように。
“108本の薔薇の言葉”を。
―End.
2012.11.13