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“JADE様”

そう書かれた紙が貼られた扉の前。

そっとノックをすると、一拍置いて中から扉がカチャリと開いた。

「詩季ちゃん…」

わずかに見開かれる、その瞳。

顔にかかる前髪が少しだけ乱れていて。

「ごめんなさい、お休み中だったのに…」

慌ててそう口にしたわたしの腕が、ぐいっと引っ張られた。

「夏輝さ…」

バタンと扉の閉まる音が背中で聞こえる。

まるでその音にかき消されるかのように、わたしの声は彼の中へ飲み込まれていった。

「…っ…」

突然、与えられた熱。

閉まった扉に背中を押し付けられて。

驚きと戸惑いで押し返そうとするわたしの腕を、大きな手が拘束する。

久しぶりに会えたことが嬉しいのは本当。

会いたくて、触れたくて、温もりを感じたくて。

だけど、久しぶりに会った彼はわたしが知っているいつもの優しい彼とは違っていて。

「んっ…はぁっ…な、つき…」

呼吸がうまくできずに、次第に体から力が抜け落ちる。

与えられるキスで、酔ってしまいそう。

「詩季…」

体を支えていられなくて、思わずしがみついたわたしの耳元で。

わたしを呼ぶ声が、震えている気がした。



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