「…はあっ」
盛大なため息をついて、ドサッとソファに身を投げる。
静まり返った楽屋にひとり。
他のメンバーと言えば、収録が終わると早々に帰って行った。
冬馬と秋羅は、どうせまた飲みにでも行くのだろう。
春はスタジオか。
ソファに寝転がったまま目を閉じる。
まぶたの裏に映るのは、はやされて照れ笑いを浮かべる彼女の姿。
ほんの2時間ほど前のこと。
久しぶりに出演した音楽番組で、俺は彼女と一緒になった。
放送が始まったばかりの月9ドラマ。
その主題歌をと、俺たちJADEが手がけることになり。
主演を務める彼女、詩季ちゃんが、俺たちが作った曲を歌うことになった。
そして揃って音楽番組への出演。
そこまでは良かったのだが。
偶然にもドラマで彼女と共演したWaveも今回の収録で一緒になり。
話題が撮影内容にまで及ぶと、司会者がこう言ったのだ。
『ドラマで義人くんと詩季ちゃんは恋人役を演じていますが、撮影中もおふたりはかなり仲が良いのだとか…』
瞬間、俺の中で何かが弾けた気がした。
ただでさえロケで会える時間が限られている状況で。
更に輪をかけるようにWaveのメンバーがふたりを茶化し始めたのだ。
どす黒い感情で胸が疼く。
別に、彼女が悪いわけでは決してない。
単なる仕事仲間だということも分かっている。
「…いつからこんなに嫉妬深くなったんだ…」
そんな呟きが、思わず口からこぼれ落ちた時。
コン、コン。
控えめなノックの音が室内に響き渡った。