1

「…はあっ」

盛大なため息をついて、ドサッとソファに身を投げる。

静まり返った楽屋にひとり。

他のメンバーと言えば、収録が終わると早々に帰って行った。

冬馬と秋羅は、どうせまた飲みにでも行くのだろう。

春はスタジオか。

ソファに寝転がったまま目を閉じる。

まぶたの裏に映るのは、はやされて照れ笑いを浮かべる彼女の姿。

ほんの2時間ほど前のこと。

久しぶりに出演した音楽番組で、俺は彼女と一緒になった。

放送が始まったばかりの月9ドラマ。

その主題歌をと、俺たちJADEが手がけることになり。

主演を務める彼女、詩季ちゃんが、俺たちが作った曲を歌うことになった。

そして揃って音楽番組への出演。

そこまでは良かったのだが。

偶然にもドラマで彼女と共演したWaveも今回の収録で一緒になり。

話題が撮影内容にまで及ぶと、司会者がこう言ったのだ。

『ドラマで義人くんと詩季ちゃんは恋人役を演じていますが、撮影中もおふたりはかなり仲が良いのだとか…』

瞬間、俺の中で何かが弾けた気がした。

ただでさえロケで会える時間が限られている状況で。

更に輪をかけるようにWaveのメンバーがふたりを茶化し始めたのだ。

どす黒い感情で胸が疼く。

別に、彼女が悪いわけでは決してない。

単なる仕事仲間だということも分かっている。

「…いつからこんなに嫉妬深くなったんだ…」

そんな呟きが、思わず口からこぼれ落ちた時。

コン、コン。

控えめなノックの音が室内に響き渡った。



* #

BKM/BACK/HOME
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -