ポロン、ポロンと、長い指が弦を弾いて。
小さく口ずさむ、愛の歌。
わたしの書いた詩と、春の書いたメロディ。
音源となって届いたばかりのこの曲を、わたしは昨日の撮影終了後に初めて聴いた。
「…キミを想いながら…詩季のために作った、詩季の曲だ」
「春…」
カタンとギターを置いた手が、わたしの頬に伸ばされる。
頬に触れた指が、ツウッと頬をなぞり、アゴを持ち上げ。
わたしの心を射抜く彼の熱い視線に、胸が揺さぶられ、身動きが取れなくなる。
「詩季…キミが欲しい」
ストレートな言葉が、わたしの中に入り込み、全身を熱くしていく。
吐息が触れるほどの距離に近づいた彼の瞳が妖しく揺れ、そのまま視界が閉ざされた。
唇に感じるやわらかな感触は、次第に甘く、深くなっていく。
「…んっ…は、る…」
「キミのその声は…俺だけのものだ…この唇に触れて良いのも…俺だけ、だろう?」
「…っ!」
妖しく揺れる瞳の中に、赤い炎が見える。
10月から放送中の月9ドラマ。
その中でわたしは、キスシーンを演じている。
そのことに春は、特に顔色を変えることもなかった。
ホッとするのと同時にショックでもあったのは、少し前のこと。
けれど今、彼が初めて見せた、嫉妬の色。
「俺以外の男がキミに触れることは…許さない」
襟ぐりの開いた胸元に大きな手が触れて。
次の瞬間、肩ごと強引に露わにされた。