TRRRR……

夕食の後、ちょうど課題を終えてパソコンの電源を落とした時だった。

机の上に置いていた携帯電話が着信を告げる。

(あっ……智也さん!)

「は、はいっ」

思わず飛びつくように電話に出ると、クスッと笑う気配がする。

「……もしかして俺が電話するの、待っててくれた?」

「あ……」

彼の言葉に、一気に頬が熱くなる。

言葉を失ったままのわたしに、彼はそっと囁く。

「四葉。扉を開けてごらん」

普段よりも少し低い声がわたしの鼓膜を刺激して。

携帯電話を持つ手がビクッと震える。

「え……あの……智也さん?」

戸惑いながらも部屋の扉を開けると、そこには。

「……驚いてくれたみたいだね」

今、電話で話していた相手がそこにいて。

わたしを優しい眼差しで見つめている。

「智也、さん……どうして……」

そう口にした瞬間。

スッと扉の内側に身体を滑り込ませた彼が。

扉が閉まるまでの時間も惜しいというように。

グイッとわたしを抱き寄せた。

パタンと、彼の後ろで扉が閉まる。

「四葉を攫いに来たんだよ」

熱い吐息が耳のすぐ側で聞こえる。

わたしを抱きしめる腕の強さと、その温もりに、少しずつ体温が上がって行くのが分かる。

「四葉……」

迫って来た瞳に射すくめられて。

「智也さ……」

わたしの声は呑まれていった。


――End.



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