サワサワと風に揺れて、葉ずれの音が耳に届く。
夜空に浮かぶ月の灯りが、淡くわたしたちを照らして。
「四葉……」
スッと細められた瞳と、頬をなぞる指先に、わたしは息を呑んだ。
「千尋さ……」
乾いた唇から漏れた言葉は、触れた指に阻まれて。
「いつまで……そう呼ぶの?」
「……あ……」
「やっぱり、出かけるのはやめよう」
「えっ?」
切なげに逸らされた瞳。
そして、向けられた背中。
わたしは思わず、彼へと手を伸ばした。
「あ……きゃっ」
グイッと突然手を引かれて、小さく悲鳴を上げたわたしの目の前に、妖しく揺れる瞳が覗く。
「ちゃんと俺のことを呼べるまで……お仕置きしなきゃ、ね?」
「千尋……」
「そう……キミのこの姿も……」
吐息が触れ合う距離で囁く彼の瞳の中。
浴衣姿のわたしが映る。
「ほら、そんな顔で……誘っているの?」
つうっと唇をなぞった指が、わたしの顎をクイッと上げる。
「呼んで……もう一度」
誘われるようなその声に、わたしはもう抗えない。
「千尋……っ」
絡め取られるような深いキスが降って来た、その瞬間。
ドーン、という音と共に、夜空に浮かび上がった光の輪が、わたしたちの重なる影を映し出した。
――End.