「いつも……ありがとな」

「え……?」

急に改まってお礼なんて言われて、顔を上げると。

「創一?」

彼の腕がわたしの背中に伸びて、優しく抱き寄せられた。

「四葉……これからもずっと側にいろよ」

「……うん」

わずかに離された手が、今度はわたしの頬を包むように添えられて。

触れ合った唇からは、かすかにほろ苦いココアとチョコレートの味がした。

チョコレートなんていらないと言っていたのに。

傾いたオレンジ色の太陽を浴びる11個の薔薇の蕾と。

室内に広がるコーヒーの香りと。

離れても離れても触れ合う、ふたりの唇。

「創、一……」

胸に込み上げる想いが、吐息混じりの言葉を紡ぎ出す。

「……止まらねぇ……」

彼の切なくも甘い呟きが、わたしの心を溶かしていった。


――End.



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