それは数日前のことだった。

夕食を終えたリビングで、彼女はテレビを見ながら考え込む様子を見せる。

「どした?そんな難しい顔して」

ひょこっと背後から顔を出した裕介に、彼女は驚いて目を見開いた後、その顔にパッと笑顔を広げた。

「あ、ううん。大したことじゃないんだけど。ほら……」

彼女が指差した先には、『ふたご座流星群』のテロップが表示されたテレビの画面があった。

「……へぇ。10日の夜が見頃なのか。うーむ」

そう言って裕介は一瞬、何かを考える仕草をした。


(そっか。裕ちゃん、あの時のこと、覚えててくれたんだ……)

裕ちゃんの気遣いと優しさが胸にじんわりと染み込んで、それがゆっくりと身体を温めていく気がした。

私は目の前に広がる星空から、隣に寝転がっている彼に視線を移し、それから自分の胸元を見やる。

「ねえ、裕ちゃん……これ、って……」

「ん?」

頬がカアッと熱くなるのを感じながら、私はおずおずとこう口にした。

「2人用の……寝袋……なんて、あるんだね……」

私たちの身体を包んでいるのは、2人用の寝袋。

寝袋といったら、筒型の1人用のものしか知らなかった私は、彼に促されて中に入ろうとした瞬間、固まってしまった。

2つの寝袋がくっついた形になっているこの寝袋。

中はそれほど広くなく、ギュッと密着した身体に、さっきから心臓がバクバクと騒いでいる。

あまりに動転していて、状況を理解できないままに裕ちゃんに引っ張り込まれてしまったけれど、冷静に考えると……全身に火がつくようだ。

「オレ……これから先も、いろんなことを四葉と一緒に見たり聞いたりしたいんだ」

ふいにそう言葉が落とされ、横を向くと彼の真剣なまなざしが私を見つめていた。



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