(裕ちゃん……気に入ってくれるといいけどな……)
その日の夜。
夕食が終わり、お風呂も済ませ、私は裕ちゃんに言われた通り、ジャンパーを羽織って屋上に向かっていた。
裕ちゃんに見つからないように、プレゼントの袋をこっそりと隠し持って。
キイ…。
屋上の扉を開くと、そこに広がるウッドデッキの上には、何かが広げられていた。
「おっ、四葉。いらっしゃい♪」
「裕ちゃん……電気、点けないの?」
真っ暗な屋上に、開かれた扉から洩れる明かりがスウッと伸びている。
「んー?今日はこれでいいんだ。ほら、四葉もこっちおいで」
そう言って裕ちゃんは私に向かって手招きをする。
「ねえ、それって……寝袋?」
ウッドデッキの上に広げられていたのは、寝袋だった。
その中に寝転がったまま、彼は枕元に置いていたラジオに手を伸ばし、スイッチを切った。
「どうしたの?これ……キャンプ?」
扉を閉めた私は、彼を踏まないように暗闇の中をゆっくりと近寄る。
「それよりも……」
グイッ。
「キャッ」
急に腕が引っ張られ、私はドサッと裕ちゃんの上に倒れ込んだ。
驚く私の顔に、至近距離にあった彼の顔が近づき、チュッと軽く口づけされる。
「ゆ、裕ちゃんっ?」
「……つかまえた」
唇を離した裕ちゃんが、私をギュッと抱きしめる。
甘えるように、肩に埋められる彼の顔。
何だか少しくすぐったくて、でも少し嬉しい。
いつも私を引っ張ってくれる裕ちゃん。
たまには私も、甘えてもらえる存在に……なれていたらいいな。
「ねえ、裕ちゃん……今日はどうしたの?」
私はそっと気になっていたことを尋ねてみる。
ゆっくりと顔を上げた彼は、私の肩越しに頭上に広がる夜空を眺めながら、こう言った。
「今日は四葉と、星空デートに出かけようと思ってさ」