私の腕を引いたまま、栗巻さんが向かったのは、離れの暗室だった。
「わあ……」
私の目に飛び込んで来たのは、拡大された私のパネル写真。
それは、初めて栗巻さんが撮影してくれた、あの大賞を取った写真だった。
(あれ……?でも……)
「これ……フォトモザイク……?」
何十枚になるだろうか、小さな写真を組み合わせて作られたモザイクアート。
その小さな写真1枚1枚も、全て私の写真で出来ている。
「すごい……」
思わず感嘆の声を洩らした私をギュッと栗巻さんは抱きしめた。
「一番乗り」
「えっ?」
「誕生日おめでとう」
「あ……」
薄暗がりの中、暗室に掛けられた時計に視線を送ると、午前0時を指している。
「一番に言いたかったから……買い出し係にしてもらった」
「栗巻さん……」
「……嫌だった?」
勢いよく首を横に振る私に、ほっとしたように息を吐く。
「これ……俺の気持ち……いつも四葉でいっぱい」
ふわんと大好きな笑顔を向けて、栗巻さんは言った。
「それから……四葉に俺をプレゼント」
「……えっ!?」
思いがけない言葉に真っ赤になる私の顔を一瞬覗き込んだ栗巻さんは、視線を外して呟いた。
「……いらない?」
「あ……いえ……そういうわけじゃ……」
「じゃあ、もらってくれる?」
「でも、私……まだ何も用意していなくて……」
私の言葉を待って、栗巻さんの顔が近づいてくる。
「うん……だから、俺にも四葉をちょうだい」
――――End.