「……ごちそうさま」

その時、黙って食事をしていた菊原さんがスッと立ち上がり、こちらに近づいてきた。

「……がんばって」

通りすがり間際、そっと私の背中に手を当て、ささやきが落とされる。

(あ……)

背中にかすかに触れた温もりに、ドキンと胸が鳴った。

そのまま彼はキッチンへ食器を下げに行き、視線をテーブルへ戻すと、みんなの優しい視線が私に向けられているのだった。

(みんな、応援してくれてる……あと少し、がんばろう)


そして12月も半分が過ぎようという頃。

3週間という短期間で、寝る間も惜しんで作り上げた私たちの作品の中から、1作品が選ばれた。

私がデザインし、長門さんが作った模型の前には、『優秀賞』のプレートが掛けられている。

そして、その隣。

『最優秀賞』のプレートは……。


とある建設現場に一人の青年の姿があった。

間もなく始まる、大型イベントの準備に向けて急ピッチで作業が進められている。

ヘルメットを被ったその青年は、フウッと大きく息を吐き出すと、ドカッと地面に座り込んだ。

そして横に置いてあった包みを手にし、フッと表情を緩めた。

包みをほどくと、箱の上には2つに折られた紙が乗っている。

カサッ。

そこに書かれた文字を目で追いながら、冷えた身体がゆるやかに温まっていく気がした。

「ったく……サンキュな」

しばらく会っていない恋人が作って置いてくれた弁当を前に、青年は無言で手を合わせた。

その青年の頭に、白い小さな羽がふわり、舞い降りたのだった。



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