学園祭も終わり、ひと息ついたかに見えた11月下旬。
私はいつものように、なずなとアキちゃんと共に講義に耳を傾けていた。
チャイムが鳴り、生徒たちは一斉に片付けを始める。
私もノートを閉じると、カバンを手にして移動の準備に取りかかった。
「……すまないが、ちょっと聞いてくれ。建築科と合同でクリスマスイルミネーションのコンペに参加することになったんだが、興味のある者は後で僕のところへ来てくれないか」
(イルミネーションのコンペ……?)
建築科という言葉に、私の頭の中には創一の姿が浮かぶ。
(創一は……出るの、かな……?)
そんな考えを巡らせていると、隣でスッと席を立つ影があった。
「クリスマスイルミネーションのコンペなんて……面白そうね」
見上げると、アキちゃんがフッと私に笑みを向けた。
「四葉ちゃんは……参加するんでしょ?」
「えっ?」
思いがけない言葉に声を上げると、アキちゃんは意味深な視線を向けてくる。
そして私の耳元に顔を近付けると、いつもより低い声でささやいた。
「だって……建築科とのコンペだもの」
「あっ、アキちゃん……」
カァッと頬が熱くなるのを感じて、とっさに頬に手を当てる。
「やだなぁ。何ふたりでナイショ話してんのよー」
すると、反対側に座っていたなずなが荷物を持ちながら立ち上がった。
「ちょっと……なずなってば」
私は恥ずかしさを誤魔化すように席を立つと、ふたりに声をかけた。
「あ、私ちょっと教授のところに用事があるから……先に行っててくれる?」
「オッケー。じゃ、待ってるね」
私はふたりに背を向けて、教室を飛び出した。
教授と話を終えた私は、廊下を歩きながら食堂へ向かっていた。
(建築科の学生とペアで、イルミネーションをデザインするなんて……)
12月下旬から翌年1月下旬にかけて、都内で大規模なイルミネーションイベントが行われることは知っていた。
数年前にも有名な建築家が手がけた、神戸のイルミネーションの東京版が開催されていたが、規模もそれに劣らないくらいらしい。
コンペで最優秀賞を獲得した作品は、その一角に自分のデザインしたイルミネーションが建てられる。
先ほど教授から貰った資料をカバンから取り出して、私はそこに並ぶ文字を眺めた。