その時。

カラーン、カラーン、カラーン。

どこからか鐘の音が響いてきた。

午前0時。

そして。

「あ……」

街を彩っていた電飾がパッと消えた。

わたしたちを包む闇の中に、ポツ、ポツ。

淡いオレンジ色の小さな灯りが道しるべのように続いている。

「キレイ……」

わたしの口からこぼれたのは、ため息のような言葉。

火照っていた頬を優しく撫でる空気。

ゆるやかに流れていく時間。

ふわり、何かが目の前を降りてきて。

視線を少し上げると、そこには……

「雪だ」

栗巻さんの短いつぶやきが落とされた。

「うん……」

閑で、やわらかな、クリスマスの始まり。

カシャッ。

ふいに隣から聞き慣れたシャッター音が響いて、わたしはそちらに視線を向ける。

目元からカメラを離した彼は、長い指をわたしの頬に触れた。

「四葉……色っぽい」

一瞬、ふわんと微笑みを浮かべた後、彼はスッと目を細めてわたしを見つめる。

その真剣なまなざしが、まっすぐにわたしの中に入ってきて、心が揺さぶられていく。

「俺もクリスマスプレゼント……もらっていい?」

「あ……」

こぼれた吐息を、そっと彼の唇が拾っていく。

穏やかで甘い、唇から伝わる温もりは、彼の写し出す世界のよう。

わたしたちの頭上に舞い降りてくるのは、白い空からの贈り物。

きっと朝には、世界は白に染まっていて。

わたしは彼の温もりに包まれながら、大好きな朝焼けを見るのだろう。


――End.



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