カサッ。
中から出てきたのは、マフラーだった。
「四葉……これ……もしかして四葉が編んでくれた、とか?」
「……うん。お店で売ってるみたいにはできなかったと思うんだけど……」
プレゼントに何を贈ろうかと考えていた時、ちょうど寒そうに首をすくめながら帰って来た彼を見て、マフラーを思いついたのだ。
スッと私の頬に頬を寄せた彼は、耳元でそっとささやいた。
「ありがとう……今つけてもいい?」
「あ……う、うん」
「じゃあ……四葉がつけて」
「え?」
裕ちゃんは私にそのマフラーを押しつけて、身体を少し屈めるようにする。
手渡されたそのマフラーを首の後ろに手を回して巻く。
それを満足そうに見下ろして、ちょんと先をつまんで持ち上げると、裕ちゃんは言った。
「いいな、こういうの……四葉が、オレのこと想って、オレのこと考えてくれてたのが分かる……」
「裕ちゃん……」
「でもせっかくだから……」
そう言って、マフラーの先を引っぱって緩めると、それを私の首にかけた。
「こうやって……一緒に使お?」
目の前の彼の顔がゆっくりと近づき始めた時、そのすぐ横の空にスッと流れるものに気づいて、私は思わず小さく声を上げた。
「……あっ」
「……ん?」
頭上を見上げた裕ちゃんは、少し残念そうに、でも嬉しそうに、ポツリとつぶやいた。
「あーあ。いいとこだったのになぁ……でも、四葉の見たかったもの、見れて……良かった」
見上げた空には、いく筋もの光が流れ落ちている。
「ふふ。裕ちゃん……おめでとう。それから……ありがとう」
私はクスクスと笑いながら、彼の肩に寄り添った。
「ん……じゃ、も一個……おねだりしていい?」
「……んっ……」
振り向いた瞬間、唇を優しく塞がれた。
シンと静まり返った夜。
頭上には、光のシャワーが降り注ぎ、やわらかな月の明かりがふたりをそっと見守っていた。
Happy birthday, my darling.
――End.