「詩季ちゃん…」
わたしの言葉に、ふっと笑った崇生さんは、じゃあ、と言ってわたしの膝に頭を乗せた。
「詩季ちゃんには、敵わないな…いつも、助けられて…支えてもらってる…ありがとう」
まっすぐに、下から見つめる眼差しが、柔らかくて、優しくて。
胸がきゅっと締め付けられるくらいに。
「崇生さん…」
触れたくて、温もりを確かめたくて。
わたしは自分から、彼にキスをした。
「詩季ちゃん…」
「わたしの前では…もっと、甘えてください。その方が、嬉しいんですよ…?」
少しだけ唇を離して、お互いの吐息が混ざり合う。
「ひとつだけ、わがままを言っても、いいかな…」
「何ですか?」
「…今夜は、ずっと一緒に…詩季を側に感じたい…」
低く、掠れる声で彼はそう言って。
ふたりの距離を埋めるように、深い口づけが降りてくる。
胸の奥が熱くなって、呼吸が苦しい。
離された唇が耳に触れ、首筋を伝い、下へ、下へ。
「んっ…」
こぼれ落ちた声を合図に、彼はわたしをソファから抱え上げた。
寝室の扉の向こうへと、ふたりの姿が消えて行って。
後に残されたのは、テーブルの上に置かれた、小さな紫色の花。
おじさんが教えてくれた、ホトトギスの花言葉。
永遠にあなたのもの、だって。
―End.
2012.8.31