「…お前…そんな可愛いこと言うな」
「え…流輝さん…んんっ!」
呼吸をも奪うような深い口づけが降って来て、わたしの思考は薄れていく。
(あ…流輝さんの手が…)
ゆっくりとベッドに押し倒されて、パジャマのボタンをプツリとひとつずつ外される。
「知ってるか?…アイリスの由来…女神イリスは、エロスの母なんだ」
「エロスの…?」
「ああ。愛の神、エロスのな」
話しながら、流輝さんの熱い吐息が唇に、頬に。
耳に、うなじに、肩に。
敏感な肌を伝って、自然と体が反応してしまう。
「あっ…待っ…」
「ダメだ。待てない。お前が可愛いこと言うのが悪い」
強く肌を吸い上げられて、熱いため息がこぼれる。
「流輝さ…」
無意識のうちに、腕を首に回すと、彼は愛おしそうにこう言った。
「お前が待てなくなるくらいに、愛してやるよ」
(そんな、優しい目で言われたら…もう…)
さらけ出された素肌の上を、唇と長い指先が下りていく。
「詩季…愛してる…」
与えられる刺激に、ただただ翻弄されながら。
わたしは流輝さんに全てを任せた。
愛の神の母。
イリスの名を持つ、花の香りに包まれながら。
―End.
2012.1.14