さっきよりもだいぶ、雨脚の弱くなった窓の外の景色をぼんやりと見つめていると。
すっと木の陰から飛び立った小鳥が、向かいにある家の生垣に止まった。
赤に近い濃いピンク色をした生垣に咲く花は、ブーゲンビリア。
雨雲が去って、西の方には水色の空と、降り注ぐ太陽の光が見える。
カチャリ。
背後で扉の開く音がして、振り返ったわたしは思わずデジャヴでも見ている気になった。
「あ…」
言葉を失って赤くなったのは、今度はわたしの方だ。
なぜなら、彼はわたしと同じ、白いシャツを着ていたから。
意図したわけではないのだろう、ペアルック。
それに気づいた彼もまた、熱いシャワーで上気した頬をまた赤く染めた。
「…詩季にはやっぱり、大きかったね…そのシャツ」
照れたように笑って見せながら、彼はそう口にした。
「うん…」
「…詩季。おいで…髪、まだ濡れてる」
ソファに座った彼が、タオルを手にわたしを呼ぶ。
そっと隣に腰掛けると、太ももまでのシャツが心許なくて。
「…一磨も濡れてるよ…ふふっ。拭いてあげる」
恥ずかしいのを誤魔化すようにそう言って。
伸ばした手は、途中で彼の手に捕らえられた。
「一磨…?」
ドキン。
胸が音を立てるのが分かる。
痛いくらいに打ち付ける心臓の音。
捕らえられたのは手だけじゃなく、わたしの視線も、だった。
「詩季…」
熱を含んだ強いまなざしに、目を逸らせない。
ゆっくりと近づいてくる彼の気配に、わたしは体を強張らせた。