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ふわりと柔らかくカーテンを揺らす夜風が、優しくそっと前髪を撫でていく。

穏やかな寝顔を映すのは、カーテンの隙間からほのかに差し込む月の光。

静かな寝息が、すう、すう、と心地よくて。

「…詩季…」

思わず呼びかけてしまう。

こうして、夜を共に過ごすのことも、最近はお互いの仕事が忙しく、めっきりなくなっていた。

腕の上に乗った頭をそっと枕に戻して。

俺はかすかに気だるさを残した体を、ベッドの上に起こした。

カタン。

小さく弦の震える音が、静かな夜の空気に響いて溶けていく。

ポロンと優しい和音を奏でれば、口からこぼれるささやかな歌。

”プリムラ”

久しぶりに作詞に携わった新曲は、気がつけば君への想いであふれていて。

京介にからかわれたっけ。

「…ん…」

シーツの擦れる音が、ギターと歌声に紛れていく。

寝返りを打った君の白い肩が、シーツから覗いて、とても綺麗だった。




―End.

2012/8/21



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