「え…うそ。これって…スイートルーム?」
虎之介に連れられるまま、たどり着いたのは。
ホテルの最上階、スイートルームだった。
「今日頑張ったご褒美だ。あと…」
「あと…?」
眼下に広がるパリの夜景を前に。
伸びて来た腕がわたしの腰を引き寄せる。
「…お前の喜ぶ顔が見たかったから」
「…ん…」
ふわりと唇を塞がれて。
与えられる優しいキスに、溶けてしまいそうになる。
「…普段、あんまりデートとかできねーし。けど…もう俺たちの任務は終わっただろ?」
「…うん」
「だから…今からは…」
耳元に囁きが落とされて、虎之介の手が着物の帯へと伸ばされ、スルッと手先が解かれた。
「あ…待って…シャワー…」
首筋に触れた柔らかい感触と。
床に落ちる帯。
うなじを伝った指先が、纏めていた髪を解いて。
「…待てない。お前が先」
「んん…っ」
深く絡み合う口づけに、頭の中が真っ白になっていく。
ハラリ。
着物が肩から流れ落ちて。
「詩季…愛してる…」
ギシ、とスプリングが軋む音が聞こえた。
「…っあ…」
絡み合う指に光るのは、彼が贈ってくれたリング。
思い出すのは、ヘンネスが教えてくれた言葉。
”胡蝶蘭の花言葉は、『あなたを愛します』と言うのよ”
「わたしも…愛してる…」
―End.
2012.1.22