ねえ、あなたは言ったよね。
最初で最後だって。
”愛してる”なんて言葉、なくてもいい。
ふたりの言葉を、心を、思い出を、重ね合わせて、束ねて。
あの純白のブーケみたいに。
ずっとずっと、未来を、一緒に生きて行ってね。
「…おいで」
そっと唇が離れて、息のかかる距離で徹也くんは囁いた。
「え…」
頭がぼうっとして、彼の言葉を理解できない。
「…続き」
そう言い置いて、彼はわたしを軽々と抱き上げた。
「…うん…」
夕日が夜闇に紛れて、小さな光が空に瞬き始める。
月の明かりだけが届く静かな部屋で。
ふたりの温もりが溶け合う頃、脳裏に蘇る、サントリーニの街並み。
手を繋いで細い路地裏を。
スクーターに乗って、島を駆け抜けた。
丘の上の教会で、途方もなく青い空と海に包まれて。
アクロティリの遺跡で、アトランティス大陸伝説に触れて、心が震えた。
いつかまた、あの島へ。
地中海に浮かぶ月に。
「…詩季っ」
「…徹也くん…っ」
―End.
2012.12.13
参考文献:
神々の故郷とその神話・伝承を求めて