3

ねえ、あなたは言ったよね。

最初で最後だって。

”愛してる”なんて言葉、なくてもいい。

ふたりの言葉を、心を、思い出を、重ね合わせて、束ねて。

あの純白のブーケみたいに。

ずっとずっと、未来を、一緒に生きて行ってね。

「…おいで」

そっと唇が離れて、息のかかる距離で徹也くんは囁いた。

「え…」

頭がぼうっとして、彼の言葉を理解できない。

「…続き」

そう言い置いて、彼はわたしを軽々と抱き上げた。

「…うん…」

夕日が夜闇に紛れて、小さな光が空に瞬き始める。

月の明かりだけが届く静かな部屋で。

ふたりの温もりが溶け合う頃、脳裏に蘇る、サントリーニの街並み。

手を繋いで細い路地裏を。

スクーターに乗って、島を駆け抜けた。

丘の上の教会で、途方もなく青い空と海に包まれて。

アクロティリの遺跡で、アトランティス大陸伝説に触れて、心が震えた。

いつかまた、あの島へ。

地中海に浮かぶ月に。

「…詩季っ」

「…徹也くん…っ」


―End.

2012.12.13

参考文献:神々の故郷とその神話・伝承を求めて



* →#

BACK/49/132
- ナノ -