「なあ…覚えてるか?」
「うん…?」
「いつか、2人で世界を旅しようって言ったこと」
耳元に感じるささやき。
その言葉に、2年前の約束が蘇る。
高校3年生だった、あの頃。
誰も知らない星を探していたと言った零。
「もちろん、覚えてるよ。忘れるわけない…」
「もし…アメリカに住む気はあるかと聞かれたら…あんたはどう答える?」
「…え…」
全く予期しない言葉に、一瞬、思考が止まった。
それがどういう意味を指すのか。
そんな疑問が喉元まで言葉が出かかった。
「こっちの研究所から、誘いが来ている…アメリカに残って、研究しないかと」
「零…」
ふっと空を仰いだ彼が、瞬く星を見つめながら続ける。
「…行きたい気持ちはある…ただ、あんたと離れ離れになるくらいなら、俺は…」
「わたしは…零のことを応援したいよ…」
彼がアメリカに残るかもしれない。
そんなこと、考えたこともなかった。
自分がどうしたいかなんて、自分でもまだ分からない。
将来のことなんて、分からない。
想像もつかない。
でも、ずっと変わらない気持ちがひとつだけある。