わたしが帰国すれば、また1年、離れ離れになる。
アメリカに来ても優秀な零は、いつかの約束のように、1年飛び級して今は3年生だ。
大学を卒業したら、どうするのか。
プロジェクトの研究で忙しい彼が、何を考えているのか。
見えない未来を探して、わたしはまた少し、不安になる。
「…くしゅっ」
空を見上げながら、そんなことを考えていたわたしは、不意にくしゃみを漏らした。
「今夜は冷える…おいで」
望遠鏡から視線を外して、そう言った彼がわたしの体を引き寄せて。
ふわりと優しい温もりが背中からわたしを包む。
腰に回された腕にぎゅっと抱きしめられて。
トクン、トクン、ふたりの鼓動が重なる。
「あったかい…」
「…あんたの匂いがする…」
ふっとかすかに笑って、髪に顔を埋める気配。
ずっとこうしていられたら。
ここに残りたい。
零の側にいたい。
何度、口にしかけただろう。
「…ズラミスとサラミという仲の良い夫婦は、死んでアルタイルとベガという星になった」
突然、何の前触れもなく、語り始めた彼の手が、少し震えている。
戸惑いながら、そっとその手に触れると。
長い指がわたしの指を絡め取った。
「死んで星になっても一緒にいたいと願ったふたりは、空に橋を架けた…」
「それって…天の川…?」
「ああ…」
フィンランド出身の友達に教わったのだと。
彼はそう付け加えた。