「ありがとう…詩季」
「…え?」
ふわりと部屋の中を満たす、ジャスミンの香りと。
優しく肩を抱き寄せる、一磨さんの温もり。
テーブルの上に置かれたカップには、可憐な白い花が浮かんでいる。
「今日を一緒に過ごせて…」
穏やかなその微笑みが、とてもやわらかくて。
仕事帰りの、静かな夜更けに。
ほんの少しだけでも、こうして彼の特別な日を一緒に過ごせたことに。
ふっと小さく微笑んで、彼の肩にそっと頭を乗せた。
「…”わたしはあなたについて行く”…」
「詩季…?」
「ジャスミンはね、インドでは愛の花と呼ばれているんだって」
恋人から贈られた花を、髪に編み込んだり、結婚式には首飾りにするのだとか。
包み込むような、やわらかな花の香り。
それは今日、撮影で使った、小さなジャスミンのブーケ。
「詩季」
「…なあに?」
「来年も、再来年も…ずっと…今日を一緒に過ごしてくれる?」
「…はい」
来年も、再来年も、その先もずっと。
この約束も。
ジャスミンの花言葉も。
君だけが知っていて。
Happy birthday, Kazuma.
―End.
2012.1.16