“波風がやさしく君の髪なびかせ

日差しはまだ幼いまま僕らに微笑んでる

どんな言葉さえかなわない横顔

夏色の恋は今から始まってゆく”


梅雨明けの青空。

窓から流れ込む海風が、長く伸びた髪を攫っていく。

カーオーディオから流れてくるのは、夏歌リクエスト。

わたしは心地よく頬をなでる風を吸い込んで目を閉じた。

「こんな出会い方するなんて想わなかった……」

小さくつぶやくように、そっと声をメロディーに乗せると。

クスッと笑う気配がして。

視線を隣に向けると、照れたようにかすかに染まった頬で、優しく微笑む一磨さんの姿があった。

「……前にも同じようなことがあったね」

「ふふ。そうだね……また夏が来るんだね」

「ああ……」

海岸線を走る車の中。

初めてこの海へ連れて来てもらった時のことを思い出す。

あれからいくつ、ふたりで夏を過ごしただろう。

「僕の瞳に見えるもの、全て君にささげよう。今から始まる二人の恋……」

こうしてふたりで、同じ時間を過ごして。

同じ景色を見て。

同じ風を感じて。

今年も、来年も。

そんな風に未来を少しずつ見つめ始めている。


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