それはつい今し方、ふたりが観ていた映画に使われている曲だった。

彼の優しい歌声に包み込まれて。

いつしか視界が霞んでいく。

「so darling', darling', stand by me……」

彼の声をかき消してしまわないように、小さく歌詞をつぶやきながら。

わたしはそっと彼の肩に頭を乗せる。

その瞬間、ギターを弾く手と歌声が同時に止まって。

「詩季?熱くないか?……ちょっとごめん……」

少し焦ったような声が頭の横で聞こえたかと思うと。

首に触れる大きな手の感触。

「……やっぱり。熱がある。詩季、横になった方がいい」

ゆっくりと薄れていく意識の中で。

わたしを横抱きに抱え上げる力強い腕の感覚だけが鮮明に感じられるのだった。


(……ん……)

ゆっくりと夢の中をさまようように、意識がふわりと浮上してきて。

でもまだ重たい瞼をあげられずに。

まどろみの中で聞こえるギターの音。

(あ……一、磨……)

優しくそっと、わたしを起こさないように気遣ってくれているのが分かる。

囁くようなやわらかい歌声。

「一磨……」

「……ん?」

消え入るような小さなわたしの掠れた声に反応して、ギターの音が消える。

差し出した手をキュッと、大きな手が包んでくれて。

「もっと……聴きたい……」

「……ああ」

「側に……いて……」

「側にいるよ」

ふわり。

おでこにやわらかいものが触れて。

再びギターの音色が部屋を満たしていく。

彼の、穏やかな歌声と共に。


Darlin', darlin' stand by me.

Oh stand by me.

Oh stand now.

Stand by me, stand by me.

Whenever you're in trouble, won't you stand by me.

Oh stand by me.

Oh stand now.

Oh stand, stand by me.


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