「そういうことで、来月の高校生クイズの人選、頼んだよ」
「……分かりました」
「…………」
校長室から出ると、ふうっとため息が洩れた。
ナツメ先輩と出場したあの高校生クイズ大会。
あれからうちの学校の評判は急上昇し、新入生の偏差値は全国トップレベルになった。
春の大会にも是非にと、校長先生からの呼び出しを受けたのだが。
(男女ペアで1校1チームかあ……またナツメ先輩と出るのかな)
(まさか……幸人先輩が出るなんて言わないだろうし……)
私がそう思った時だった。
前を歩いていた幸人先輩が立ち止まり、振り返って口を開いた。
「ナツメ……お前はどうするつもりなんだ」
「……僕は、紡となら出るよ」
迷いのないその言葉に、幸人先輩がチラリと私に視線を向ける。
「……アンタはナツメと出たいのか?」
#「えっ?」
「相手がアンタなら……俺が出てもいい」
(え……ええっ!?)
「幸人……?」
私の隣で、ナツメ先輩も思いがけない言葉に驚きを隠せない。
「どっちと出たいか……アンタが選べば良い」
「え……あの……それって……」
「決められないのか?」
(うっ……そ、そんな……)
突然迫られた決断に、私の頭は真っ白だった。
「ちょっと……幸人。僕か幸人かを紡に選べと言うのは酷なんじゃない?」
「……優柔不断だな」
フッと口端を上げて、横目に私を見下ろす幸人先輩。
「それはそうだけど。突然、参加するなんて言われて戸惑うのは当然でしょ。そもそも大会に出るという話も今聞かされたばかりなんだ」
「そんなことは関係ない。言ったはずだ……諦めたわけじゃないと」