「あれ?紡、その指輪……」

12月27日、終業式。

わたしは席に着くなり声をかけてきた美影の言葉にハッとした。

「なあに、紡ったらいい人いるんじゃない」

ポンと肩を叩く美影はニヤニヤとわたしの左手の小指とわたしの顔を交互に覗き込んでいる。

「あ、あの……違うの。自分で買ったんだよ」


慌てて弁解しながら、わたしは左手をそっと後ろに隠した。

「ふうーん?」

それでもまだニヤニヤとしている美影に、わたしは咄嗟に思いついた言葉を口にする。

「ほら、この前読んだ雑誌に載ってたでしょ?左手の小指に指輪をはめると幸せになれるって」

「そっか。そういえばそんなこと書いてあったね。なーんだ。じゃあ、誰かからもらったわけじゃないんだ?」

「……うん」

「紡にも春が来たかと思ったんだけどなあ……ま、いい人出来たら紹介しなさいよ」

口を尖らせながらも納得した様子の美影に、わたしは心の中でホッと深いため息をついた。

左手の小指にはめられた、淡いピンクゴールドのリボンの形をしたピンキーリング。

右手につけると、幸せを招き。

左手につけると、幸せがずっと続く。

「俺はお前がいてくれて……幸せなんだ。けどお前には、我慢させてることもあるかもしれねえから……」

一昨日。

クリスマスの日の夜。

この指輪とともにもらった言葉が胸に蘇ってくる。

「この指輪、ずっとつけてろ。学校でも外すんじゃねえぞ」

かすかに染まった頬で。

わたしの左手の小指にはめられた小さな小さなリング。

「約束、ちゃんと守れたら……幸せにしてやるから」




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