「幸人……」

「俺はアンタが欲しい」

再び視線が私に移り、まっすぐに見つめられ、気圧される。

手に汗を感じながら、私はただその瞳を見つめ返すことしかできなかった。

「……それは生徒会のメンバーとしてだけ?」

低く厳しい声が聞こえ、ハッとして隣を見ると、ナツメ先輩の眼鏡の中の瞳が鋭く光っている。

(こんなナツメ先輩……見たことない……)

「……どういう意味だ?」

「そのままの意味だよ」

「……白河」

「はっ、はい!」

名前を呼ばれ、私は思わず身構えた。

「どういう意味に受け取っても構わない。俺にはアンタが必要だ……それだけだ」

ナツメ先輩と幸人先輩。

ふたりの間に見えない火花が散った気がした。

「来週の試験で成績が上だった方が出場するということでどうだ」

「ああ。いいよ」

「決まりだな」

ナツメ先輩の返事を背に、幸人先輩は振り返ることなく去って行った。

私は自分の置かれた状況にただ息を飲んで、見守るしかなかった。

「紡」

「……はい」

「君は渡さない。幸人には絶対に」

――――End.




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