「……仕方がないな。保健室まで連れて行ってやる」
「えっ?……でも、あの……」
「何だ。不都合でもあるのか」
「あ……いえ、そういうわけじゃ……」
「怪我人は大人しく言うことを聞け」
ピシャリと遮られて、あっという間に幸人先輩に抱え上げられてしまっていた。
(これって……お姫様抱っこ……!?)
一気に顔が熱くなり、恥ずかしいこと以上に私は幸人先輩の行動に驚いた。
軽々と私を抱えて、無表情のまま歩いていく。
全身が心臓になったかのようにバクバクと激しい胸の鼓動を持て余して、私は思わず俯いた。
すると、ふっと小さく息を吐く気配を感じ、呟くような言葉が聞こえた。
「アンタ……なぜあいつらと一緒にいる」
「え?」
「下らない遊びに付き合わされて、迷惑じゃないのか」
「それは……」
「まあいい。アンタは分かっていないようだが、俺はナツメじゃなくアンタを生徒会に入れたい」
私の言葉を遮って、幸人先輩はそう言った。
思いがけない言葉に、私の思考は止まる。
ちょうど保健室の前に着き、扉の前で一瞬足を止める先輩。
「必ず生徒会にアンタを入れる」
顔を上げると、幸人先輩の睨んでいるかのような鋭い視線に射すくめられた。
思ったよりもずっと近くにあったその瞳は、そうすることを許さないような威圧感が漂い、目を逸らせなくなる。
「俺は欲しいと思ったものは必ず手に入れる……覚悟するんだな」
口端がわずかに上がったような気がして、ゾクッと身体が震える。
ちょうどその時、話声が聞こえたのだろう。
ガラッと扉が内側から開き、高野先生が顔を出した。
「何だ。どうかしたのか。用があるならさっさと入れ」