いつもより口数少なに、やがて彼のマンションへ到着する。

「どうぞ」

「お邪魔します」

初めてここを訪れた日から、変わらない玄関でのやり取り。

訪れる度に掃除しているせいか、以前よりはだいぶ部屋も片付くようになってきていた、けれど。

「お片付け、しておきますね」

キッチンでコーヒーを淹れてくれる孝さんに声をかけ、私はいつものように片付け始めた。

「よし。あとは……洗濯を回して……っ!」

スッキリした部屋を見渡しそう呟いた瞬間、背後から身体を包まれた。

「孝……さん……?」

「このまま……」

かすれる声が耳元で聞こえ、ゾクリとした。

やがて腕が離され、私の身体を向かい合わせる。

視線を逸らしたままの孝さんは何かを堪えているように感じ、思わずそっと頬に手を伸ばした。

「孝さん……?」

私の呼びかけに、諦めたようにため息をつくと、孝さんは口を開いた。

「自分がこんなにも独占欲が強かったなんて……」

そう言うと、私の首筋に唇を這わせ、だんだん肩へと移動していく。

(あ……撮影の……)

「キミが……メンバーや二郎と一緒にいることは許せるのに……」

「孝、さん」

「もっと俺の名前を呼んで」

射るようなまなざしに吸い込まれそうになりながら、もう一度彼の名前を呼ぶ。

「キミを壊していいのは……俺だけだから」

「っ!」

首筋を這っていた唇が耳を甘噛みする。

「キミを壊したい……心も、身体も」

――――End.




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