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翌日の夕方、挙式の報告をするためにおじさんの店にやってきた。
仕事帰りの崇生も、あとで合流することになっている
「そうか〜、最終的にあげることにきまったか〜」
「詩季ちゃん、なんかふっきれた顔してない?」
「そうだな。この前は暗い顔してたのに」
「崇生に告白でもされた?」
「・・・・んっ、んぐ・・・・!」
ちょうど飲み物をのんでいた時にそんなことをきかれ、思わずむせてしまった
「さ、されてませんよ!」
「焦りすぎ・・・」
「崇生さんがご両親にホントのことを話ししてくれたので、少し気もちが楽になれたんです」
「それを承知で式をあげてほしいって言ってくれたんだもんな」
「はい・・・その気持ちがなんだかうれしくて・・」
「ばあちゃんの笑顔もまもれるし」
「はい、そうなんです」
「けど、崇生のやつマジ頑張ったよな」
「ああ、親に本当のことをうちあけるのは、相当勇気がいるよ」
「本当にそう思います。私よりずっとつらかっただろうなって・・・・」
「男だ・・・・」
「だからいったでしょ!崇生さんは絶対になんとかしてくれるって!!」
「詩季の辛い気持ち、ちゃんと受け止めてくれたじゃねーか」
「はい・・・・」

「なんか、ここもすっかりお祝いムードなんだね・・・・」
突然すぐ後ろで声がして振り向くと・・・
「た、タツキくん!!どうして・・・!」
「みなさん、どうも御無沙汰してます」
「タツキかぁ。ひさしぶりだなー」
「おー!あのやんちゃ坊主か!」
「末っ子・・・・」
「今高校生だっけ?」
「大学です、もう子供じゃないし・・・」
「っていうか幽霊みたいにはいってくんなよ」
「こっち着て座れ」
「いえ、酒のみにきたわけじゃないので・・・」
「飯でもくいにきた?」
勇太の質問にはこたえず、まっすぐに主人公をみるタツキ
「詩季ちゃん、俺とつきあってくれ!」
「なっ・・・・」
「い、いきなり!?」
「ていうか、俺、スルーされた?」
「俺、本気だから、兄ちゃんと違って演技なんかじゃないから」
「・・・・・・・・・・」
周りの声など一切聞こえていない様子のタツキ。
その真剣な目に圧倒されかけたその時・・・
「あ・・・・・」
「た、崇生さん・・・・」
よりによってこんな時に、崇生が現れた
「タツキお前、こんなところでなにやってる?」
その声に、タツキがゆっくりと後を振り返った
「見てわからない?詩季ちゃんに告白してるんだけど?」
「・・・・タツキ」
「兄ちゃんは詩季ちゃんのこと好きんでもなんでもないんでしょ?すべて演技なんだもんね」
「・・・・・・・・・・」
「タツキくん、それはさ・・・」
「黙っててください」
「・・・はい」
「俺が詩季ちゃんを好きになっちゃいけない理由なんてないだろ?」
「二人は偽善の関係なんだから」
「・・・確かに、俺がどうこう言える立場じゃないよな」
(崇生さん・・・)
「詩季ちゃんが俺の婚約者じゃないのは確かだ・・・」
「・・・・・」
確かにそうだけど、そうかもしれないけど・・・・
なんでもいいから反論してほしかった。
そんなにあっさりひきさがらないでほしかった
「詩季ちゃん、あっちで二人でのもう」
「え・・・あっ・・・・」
主人公の手をとり、強引にテーブル席へどうするタツキ
「久仁彦さん、ビール二つね」
「あ、ああ・・・・」
「ビールでいい?」
「う、うん・・・・」
(崇生さんなら、何も言わずに私の好きな焼酎頼んでくれるよね・・・・)

「いいのか崇生?」
「タツキみたいな子はガンガン責めるぞ?」
「肉食っぽい・・・」
みんなのひそひそとした声がかすかに聞こえてくる
「はいビール」
おじさんがビールを運んできながらチラっと主人公をみた。
主人公に「いいのか?」っときいてるみたいに・・・・
「あの組み合わせの方が自然なのかもしれないな・・・・」
(え・・・・)
「崇生さん、本気なの?」
「タツキみたいなやつには、優しい年上の子がいいのかもしれない」
「ったく、こんな時まで弟の面倒みててどうすんだ・・・」
「・・・・・・・・」
聞きたくもないのに、皆の声が主人公の耳にはいってくる
(崇生さんは私とタツキくんがうまくいけばいいとおもってるんだ・・・・)
「詩季ちゃんは妹みたいなもんだし」
(妹・・・・)
崇生の言葉が主人公の胸に突き刺さった・・・
(私は・・・私は崇生さんがすきなのに・・・・)
「な?詩季ちゃ・・・・」
「私・・・」
そう口にしながら、ガタン!と音をたてて立ちあがった
「詩季ちゃん」
タツキはもちろん、一斉にみんなが主人公に注目する。
崇生もじっとみている
「私・・・」
「崇生さんが好き」その言葉が咽元までせりあがる
でも・・声に出して言えない・・・・
「私・・・帰ります・・・・」
ポツリとそういって、主人公は出口へむかった誰の目もみずに・・・
「詩季ちゃん!!」
すぐにタツキもたちあがったでも振り返らずに出口にすすむ
「どうすんだよ!兄ちゃんのせいだからな!」
ドアの閉まる瞬間、タツキのそんな声が・・耳にはいった

「詩季ちゃん!まって!!」
店をでると、タツキがおいかけてきたその声が崇生じゃないことに、少しがっかりしている
(崇生さんがおいかけてくれるわけないよね・・・)
そうおもいつつ期待した自分が悲しい
「まってってば!」
グっと手首をつかまれ、ようやく足をとめる
「ごめんねタツキくん、なんかちょっとよっちゃったみたいで・・・」
「ウソつくなよ」
「・・・・・・・」
「俺、本気だから、本気で詩季ちゃんのことがすきだから」
「タツキくん・・・」
「だから・・・俺と付き合ってほしい」
手首をつかまれたまま、真剣な目で告白された
「・・・ごめん。タツキくん、私・・・・崇生さんが好きだから・・・・」
「あはは!まだそんなウソつくき?」
「・・・・・・」
「詩季ちゃん、もうそんな演技しなくてもいいだって」
タツキは全く聞き入れようとはしなかった
「違うの・・・・」
「違うってなにが」
「ウソでも演技でもない・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「私は本当に崇生さんのことが好きになったの!」
声をあげていってしまった。
手首をつかむタツキの手を・・・振り払いながら。
もうこの気持ちを押さえることはできなかった

「・・・わかってるよ、そんなこと」
「え?」
「詩季ちゃんが兄ちゃんを好きなことくらい気づいてる・・・それでも・・・好きなんだ」
「タツキくん・・・・」
「それに・・・勘違いかもしれないよ?」
「勘違い?」
「演技をしているうちに、ウソと現実が交差しちゃっただけかもしれない」
「そんなこと・・・ない・・・・」
「仲のいい幸せな婚約者をえんじさせられて、勘違いしちゃったのかもしれない」
「違う・・・私は本当に・・・・」
その時、タツキの背後に人影が近づくのがみえた。
主人公の視線にきづき、 タツキが後を振り返った
「兄ちゃん何しにきたんだよ?」
「タツキ、それ以上詩季ちゃんを苦しめるな」
そういいながら近づいてくる崇生
「苦しめる?どっちが・・・・」
吐き捨てるようにいうタツキ・・・
「兄ちゃんがいらないなら、詩季ちゃんは俺がもらうから」
そう言ってタツキが再び主人公の手首を掴もうとした瞬間・・・
「あっ・・・・!」
一瞬の差で崇生の手が主人公の手首をつかんだ。
と同時に、ぐっと抱き寄せられる
「詩季は誰にも渡さない・・・」
(崇生さん・・・)
「もう演技はいいんだって」
「これが演技じゃないことぐらい、お前だってわかってるだろう?」
「・・・・・・・・」
「俺は兄として、お前には今まで色々してやってきたし、これからも助けていきたいと思っている。でもな・・・・」
「でも・・・なんだよ・・・・」
「でも・・・詩季だけは譲れない」
「・・・・・・!」
「そんなの、兄ちゃんらしくない。兄ちゃんはいつだって俺たちのために・・・・」
「詩季だけは・・・絶対に譲れないんだ」
タツキの言葉を遮り、きっぱりと言い気る崇生
「・・・なんだよ。偽物の花嫁なんか別にいらないだろ!」
「タツキ、偽物とかいるとか、いらないとか詩季は物じゃないんだよ」
声をあげたタツキにたいし、優しく語り始めた崇生の声
「俺にとっては大切な「人」なんだ・・・・」
そういいながら崇生は主人公を抱く腕にぎゅっと力を込めた・・・
「俺は・・・詩季を・・愛してる・・・・」
(え・・・崇生さん?今なんていったの?)
力強く温かい腕の中から、主人公はゆっくり崇生の顔を見上げた



2012/04/01 16:53


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