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私は恵人先輩と共に馬車へと乗り込むところだった。
狭い馬車の中で恵人先輩とぴったり肩が触れ合う。
「どうだ?お姫様みたいな気分だろ?」
私の緊張を和らげるように、恵人先輩がいつもの調子で話しかけてくれる。
「は、はい」
そう答えながら、隣にいるのが幸人先輩だったらと、思わずにはいられなかった。
恵人先輩に申し訳なくて、必死にその考えを拭う。
恵人先輩と他愛ない話をしているうちにパレードは終わった。

先輩に手を引いてもらい、馬車から降りる。
「……○○」
振り返ると、そこには幸人先輩の姿があった。
「ゆ、幸人先輩!?」
思わず涙腺が緩みそうになる。
幸人先輩の表情を見つめているだけで胸がキュンと締めつけられている気がした。
「○○ー!」
その時、背後から恵人先輩が私を呼んだ。
私を真ん中に挟んで、2人はじっとにらみ合っている。
「……なんだ」
「なんだじゃねぇよ!」
幸人先輩がため息をついた。
「○○、話しはまた今度だ」
それだけ言うと私に背を向けて校舎の方へと歩いて行く。
(また今度……)
何気ないその一言が、心の中に反響する。
「○○、この後Gフェスは美術準備室に集まることになっているから、そろそろ行くぞ!」
「はい」
私は恵人先輩と共に校舎の方へと歩き出す。
ちょうどその時、学園祭の終わりを告げる花火が、空に大きな花を咲かせた。



2010/05/30 16:30


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