あれだけ賑やかだった室内が、急に静まり返り、なんとなく落ち着かない気分になる。 (そうだ……一磨さんの話って……これから、とか……?) そう思いつつも口を開けないでいると、一磨さんがふっと息を吐き出した。 「昨日……話したんだ。翔と」 「あ……うん……」 「今、俺の胸にある……正直な気持ちを、翔にも伝えて……今日、○○ちゃんにも聞いてもらいたいと……思ってた」 私を見つめる一磨さんの瞳は真剣で、目をそらすことができない。 (一磨さんの、正直な気持ち……って……) 「○○ちゃんは俺にとって、そういう対象として触れちゃいけない存在だった……翔が○○ちゃんを想っているのも知っていたし……それなのに俺が、○○ちゃんを……ってなったら、翔を裏切ることになると思ったから」 「あ……」 「でも……わかっていたのに、○○ちゃんのこと、すごく気になっていって……気がついたら、気持ちを抑えることができなくなってたんだ」 そう言って、一磨さんが再び真正面から私を見る。 「俺はこれまで、どんなことに対しても努力してきたつもりだけど……それと同じくらい、いろんなものをあきらめてきたんだと思う。けど、ひとつだけ……どうしてもあきらめられないものが……できたんだ」 「一磨さ……」 「俺……○○ちゃんが……」 一磨さんの声が、強く胸を揺らしたとき……。 「……おいっ!」 (……え?) 扉の外から声が聞こえた気がして、私たちは顔を見合わせた。 「だって……聞こえな……」 (気のせいじゃなかったみたい……) 一磨さんと目配せしてから、私がそっと扉を開けると……。 「……あ」 「あ」 帰ったと思っていた4人が、扉の外でひしめきあっていた。 「お前ら!」 「あっはっは。いや〜、ここまで来たら、告白までがセットでしょ?それ聞かなきゃ帰れないって」 「それに、うちのリーダーがどんな告白するのか、ちょっと参考にさせてもらおうと思ってさ」 「まあ、いいこと言ってたんじゃないか」 「そうか?どっちかっていうと、平凡って印象がぬぐえないけど」 「ほら、義人は一磨びいきだから」 「てか、やっぱ……なんかいろいろダメ!俺、あきらめらんないよ、○○ちゃん!」 「し、翔くん……」 好き勝手なことを言うWaveのメンバーたちに、いつも穏やかな一磨さんが肩を震わせている。 「……お前らなあ……」 「あれ、怒る?ねえ、あの子、怒っちゃうみたいよ?」 「え、マジで?あの一磨が?」 「……ちょっと見とくか」 「○○ちゃーん!」 「お前ら……だから、廊下で騒ぐなって言ってるだろう!!!」 どこか的外れなようにも思う一磨さんの怒声が、辺りに響き渡る。 (ていうyか……一磨さんの声が一番大きい気がしたんだけど……) 思わず笑ってしまいながら、楽しげなみんなを見つめる。 (一磨さんの言葉、最後まで聞けなかったけど……まあ、またいつかきっと……聞けるよね) それからしばらく、病室には明るい声が絶えなかった。
2010/10/08 16:21
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