■■■■ LOVE OR LUST
1
欲しいものがある。
それはこれまで見つけたどんなきらびやかな宝も霞むような
美しくて、儚くて、手に入れても掌から零れてすぐに消えてしまいそうな
俺には到底手に入れられないもの。
手に入れる権利さえ今の俺にはない。
それでも俺は
欲しくて欲しくて欲しくて…
もしも手に入るのなら、この身がどうなったって構わない。
それくらい俺は切望してる。
―――お前のすべてが欲しい、と。
『LOVE OR LUST』
「―――セリス」
「…っ…ん…」
「俺の事、好き?」
「…ゃ…」
「言って」
「…ック…」
「言えよ」
「───…す…き…、―――っ…!」
「……嘘つき」
蒼い月明かりが射す部屋の一室で、揺れる二つの影。
想いの抑制が利かず、引かれる身体を抱き寄せ、強引に繋ぎ止める。
一方的な、虚しさを呼ぶだけの偽りの行為を俺はもうずっと続けてる。
いくら彼女を抱いても、心が満たされることはないのに。
満たされない心の隙間を埋めたくて、何度も何度も求めてしまう。
…彼女を壊してしまうまで。
いっそ本当に壊れてしまえばいい。
そしたら、その欠片を集めてそれさえも愛してあげるのに。
その瞳に映すものが俺だけになって
俺の事だけを想い焦がれて
俺の熱だけを求めてくれれば
この心の翳りは消えるだろうか。
どうして心が満たされないのか…理由はわかってる。
彼女の心が、俺にないから。
どんなに想っても、どんなに愛しても、想いは伝わらない。
寧ろ想えば想う程、伝えれば伝える程、彼女の心は遠ざかっていく。
例え身体を繋げられたとしても、例え言葉で好きだと言わせても、俺が無理矢理そうさせた事でどれも彼女の本心じゃない。
どんなに強引な事をしたって、彼女の心だけは手に入らない。
判ってる、だけど。
心が伴わない彼女とこんな事をしたって、かえって虚しさを増幅させるだけだとわかっていても。
けれど俺はこんな事で一瞬でも、刹那でも、お前を手に入れたと思い込みたくて、終わりのない悪循環を繰り返す。
なぁ
お前は今何を思ってる?
こうして身体を許してくれるだけで、充分すぎる気がするけれど
でも俺はそんなんじゃ足りない。
見つけたいのはお前の心。
手に入れたいのは
――――…お前のすべて。