Regret...

1-3



* * *



「元気でな、セリス…」

「ロックも、元気でね…」



 澄み切った空。
 緩やかに雲は流れ、温かな陽射しが降り注ぐ中、最後の挨拶を交わしロックが飛空艇を降りた。
 一番最後にマランダへ送られる私と、飛空艇の舵をとるセッツァーが、地上に降り立ったロックを甲板から見下ろす。
 ロックも、飛空艇を見上げていた。


 …けれど彼の目は、飛空艇ではなく








 私を見ていた。







「―――――っ…」







 一瞬で、視界が滲んだ。
 絶対に泣くまいと決めていたのに。
 涙が一粒目の端から零れ落ちた。





 いや…!いやだ…!
 やっぱり離れたくない…ロック…―――!





 今ここで飛空艇を降りれば、彼の元へと走ってその胸に飛び込めば、彼は私を受け止めてくれるんじゃないだろうか。
 二人で、これからはずっと二人で生きていけるんじゃないだろうか。


 一瞬、そんな想いが頭を過ぎる。
 けれど。


 頭を振った。
 ダメだ。
 ロックを困らせちゃダメだ。
 私は…私達はもう決断したのだ。
 それぞれの未来を目指すと。



「さよなら…!ロック……!」



 手を振って、彼に向かって叫んだ。
 精一杯の笑みを浮かべて。



「セリス……!!」



 ロックのその声が聞こえたと同時に、飛空艇は轟音と共に浮上して飛び立った。
 私は彼の姿が見えなくなるまで見つめ、そしてその場にしゃがみ込み、泣いた。



「ほんと強情だよな、お前も…アイツも」



 セッツァーの半ば呆れたように言うその声も耳に届かないくらい、私は鳴咽を漏らして泣いた。






 今だけは…今だけは…
 あなたを想って泣いてもいい?



 明日からは前を向いて生きていくから



 あなたを忘れるために生きていくから



 だから今は泣いてもいい?











 あなたを想う気持ちのままに…



 あなたを愛した気持ちのままに…










 こうして、私達は別々の道を歩き始めた。



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