Regret...

1-1



 私の選択は、間違っていたのだろうか。



 けれど、あの時はこれが最良の決断だと思っていた。



 私にとっても
 彼にとっても



 そう思っていた筈なのに。



 心の奥底で居座る二文字の言葉が…今も私を苦しめる。



 それは言いようのない






 ―――…後悔。








『Regret...』









【1】



 瓦礫の塔が倒壊し、平和を取り戻した今、
 皆それぞれの道を歩もうとしていた。


 故郷へ帰る者。
 旅を続ける者。



 私は…帰る故郷はない。旅を続ける理由もない。
 ならば今自分は何をすべきか…考えるより答えは出ていた。
 私がすべきは。
 しなければならない事は。
 これまでの罪を購うべく、世の為に自分に出来得る行いをする事。
 

 選択肢など初めからないのだ。
 私には…そうしなければならない責務がある。
 それだけの事を私はこれまでにしてきたのだから。


 例え善意で世の為に尽くしたとしても、過去の行いを、罪を償える訳ではないけれど…それでも私はこの世に報いたい。


 それがきっと、私がこれからも生きていい理由になってくれる。





* * *



「セリス。全てが終わったら…俺と一緒に行かないか」



 瓦礫の塔へ挑む前日、茜色に染まった空の下でロックにそう問われた。
 それを聞いた私の心臓が、一瞬鼓動を止めた。


 私はもうずっと…彼に特別な想いを抱いていた。


 サウスフィガロの地下で、鎖に繋がれただ静かに死を待つだけだった私に手を差し延べて生きる道を呈してくれたロック。
 彼があの時、あの場にいなかったら、
 あのまま己の犯した罪を胸に、ただ来るベき運命を受け入れていたら、

 …私は今生きてはいない。

 けれど、そんな私に彼は生きる道を教えてくれた。
 怪我をした私を見捨てる事もせず、守ってみせると…力強い瞳で言ってくれた。





 そんな彼に、恋をするなという方が無理な話だった。




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